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秋山真之、「ネルソン提督と東郷大将」を語る

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1805年のトラファルガーの戦いでイギリスのネルソン提督は奇策を用いた二列従陣の戦法をとります。一方、フランス艦隊は敵の針路を遮って、あたかも笠の如く是をおおい、以って放火を敵の両旗艦に集中する戦法(丁字戦法)を取り入れました。

かくしてトラファルガーではネルソン提督は戦死しますがイギリスが勝利します。

そして、1905年日本海海戦ではロシアのロジェストウェンスキー提督は、トラファルガーにあやかりネルソン提督の二列従陣を採用します。一方、東郷大将はトラファルガーで敗れたフランス艦隊の丁字戦法を取り入れます。
かくして日本海海戦では、ロジェストウェンスキー提督は破れ、東郷大将が勝利を収めます。

この戦果について、参謀・秋山真之はこう論じます。

トラファルガル海戦図と日本海海戦図とを比較して見ますと余程似寄った所がある様に思われます。然るに戦闘の結果は全然反対で、トラファルガルにて勝ちたる戦法は、日本海で破れて居ります。

是れ一は汽船兵器の進歩の然らしむるものでありますが、当時の英国海軍と等しく、今日の我海軍将卒の意気と砲術とが、はるかに敵に勝って居ったことが、戦法の如何に拘らず戦勝の大原因となすを証明して居ります。

然しながらネルソン提督の当時の戦法と、東郷大将の我国固有の戦法とを比較しまするなれば、私は矢張り数理上より推して、東郷大将の戦法を適良と認めます。其の証拠が明らかに戦果に表れて居りまして、当時英国艦隊の損害は中々多大にして、主将たるネルソン迄も名誉の戦死を遂ぐるに至りましたが、日本海の海戦では、我が戦勝艦隊の損害は比較的真に僅少でありました。これ戦法の適否に原因すること多からんと思います。

殊に東郷大将の執られたる、功を一時に収めずして数段の大計画によりて漸次に戦勝を制せらるる大将と、ネルソンの一気呵成に敵を撃滅せんとするが如きことを比較しますると、古今東西名将の価値を定むるに、大いに趣味のあることと思います。

小笠原長生著『東郷平八郎傳』より

要するに、戦略・戦術の要訣は名将を倣うことではなく、兵は活物の如く「天」、「地」、「人」の利を得ることが大事だということです。

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