
熊本城 明治9年頃
慶長年中、有名なる加藤清正の築きしものにて、現今第六師団の所在地たり。西南の役に、旧時の樓櫓多く焼失せりと雖も、城濠其他の規模は、依然として当年の雄大を想わしむ、特に城の中央に聳うる天守閣は、巍然として天を摩し、鬼将軍の稜々たる気節を表するものの如し。城内には、老樹古木立ち茂り、昼尚お小暗きあたりに、峩々たる石垣青苔滑なり、伝えいう、この城中の各建築にたける畳床は、ことごとく芋茎を以て織られたりと、これ名将が万一を慮れる計に出でしもの、以て、其深沈大謀を察すべきなり。城上より市街其他の眺望亦た甚だ富めり、彼の丘を指し、この岡を見て、谷将軍当年の籠城を追懐するも一興ならん。『日本之名勝』(明治33年)より
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