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名古屋城

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名古屋市は尾州愛知郡の乾位に在り、四方幾んど一里半、市坊の数270、戸数5万、人口18万に近く、挙げて市制の下に立てり、此地、天文年間に在りて巳に織田氏の城邑たりしも、当時尚お空漠なる広野に過ぎざりしが、慶長15年東照公其子義直を此に封じて大に城郭を築きしより、漸く市街の繁盛を加え来り、今は本邦三都に亜ぐの大都邑となるに至れり、城郭は天下無比の壮観にして、崇牅高く市の北辺に畝立せり、殊に五層の天守閣は、加藤清正自ら望んで其工事を擔任し、部下を率いて一手に造営せし所に係り、層閣巍々として雲表に秀立し、閣上には一双の金鯱、昂然として尾参両州を脾睨す、其高さ8尺5寸、胴の周囲7尺3寸、黄金1940枚を熔銷して鋳造せしものなりと云う、明治4年旧藩主徳川義宣一たび之を宮中に献納し、後、オーストリア博覧会に出陳せられて光りを全世界に輝かしたることありしが、先年市民の請願に因りて再び之を閣上に移し今や金鱗復ま高く天辺に輝くに至れり。

『日本之名勝』(明治33年)より

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